汚さに辟易して害虫におびえながらも一生懸命掃除して得たものは、実際の金額よりもずっしりと重く感じた。
『これが、私のお給金……』
すごくうれしくて、じーんと感激しているシルディーヌに、『まあ、へなちょこなりに、よくがんばったな』と言葉をかけたのはアルフレッドだ。
いつもイジワルなことばかり言うのに、珍しくも労われて、働いてお金を得るってとても尊いことなのだと、改めて感じた瞬間だった。
「大切に、使わなくちゃね」
シルディーヌは革袋の中からお札を三枚取りだして、残りは引き出しの中に仕舞った。
今日は、王宮に来て以来初めてのお出かけに加えて、初めて自分で稼いだお金を使う記念すべき日だ。
一緒に過ごす相手が、ドSでイジワルなアルフレッドであっても、この上なく充実した一日にしてみせる。
当初の目的とは大幅にずれてしまっているが、シルディーヌはすっかり気分を切り替えて、思い切り楽しむことに決めていた。
うきうきしながらクローゼットからバッグを取りだし、ふと壁にある掛け時計を見る。
「大変だわ!もう行かなくちゃ!」
約束の時間まで、あと三十分ほどになっている。
待ち合わせ場所は王宮の外で、正門から離れたところにある橋のたもとだ。
余裕を持って支度をしていたはずなのに、遅れたらアルフレッドになんて言われるか。
シルディーヌは急いで部屋を飛び出した。