「違うわ。ひとりよ。王都に出て来たけれど、まだ一度も街へ出ていないわ。すぐにお仕事が始まったもの。少しは王都ライフを楽しみたいわ」

「む……そんなに行きたいのか」

「ええ、買い物したいわ。紅茶店とか雑貨店とか行きたい。それから、今持ってる赤い傘は古いから、新しい雨傘も欲しいわ。それに、素敵な公園にも行ってみたいの」


買い物も楽しみだが、途中で素敵なお相手と出会うことを想像し、翡翠色の瞳をキラキラと輝かせるシルディーヌ。

運命の人との出会いは、いつどこであるか分からないもの。

可能性のありそうな場所は、とりあえず全部行ってみるつもりだ。

そう、定期的に月に一度は街に出なければ。

ぐずぐずしていたら、一年などあっという間に過ぎてしまう。行動あるのみだ!


「ふむ……意外に希望が多いんだな」

「けれど、アクトラスさんもフリードさんも、今は街に出るのは危ないって言うから、迷っていたの……」

「なるほど、あいつらに聞いたのか」

「フリードさんには、ひとりで行っちゃ駄目だって念押しされたわ。でもペペロネたちと一緒に行くなら、休みを合わせないといけないから難しいの」

「ふむ、悩む必要はないな」

「え? どうして?」

「俺が一緒に行ってやるからだ」

「は……? アルフが!?」

「ああ偶然だな。俺も紅茶店に行きたいと思っていたんだ。ちょうどいい、付き合え」