ぷっくり膨れて反論するシルディーヌを見、アルフレッドの目がイジワルく光る。


「ふん。それならさっき、扉の前ではなにを真面目に考え込んでいたんだ? 言ってみろ」


早く言えと促されて、シルディーヌは言葉に詰まってしまう。

婿探しのためのお休み交渉に悩んでいたなんて、仕事の鬼であるアルフレッドにしてみれば、不真面目極まりないことに違いない。

シルディーヌにとっては、一生に関わる、ものすごく大事なことなのだが。

言うべきか迷っていると、アルフレッドの腕にグッと力が入って密着寸前になった。

これまでずっと腕の中に入れられたまま。

普通こういう状態は、恋人同士の甘い営みが常識だと思うのだが、アルフレッドの場合は“拘束”という名の罰のひとつなのだろうか。

しかし悪いことをした覚えはなく、罰を受ける謂れはない。

アルフレッドの態度や思考は、本当に難解だと思う。

けれど、見つめ合っていると、ごくたまに、ほんの一瞬だけ優しい表情をするときがある。それも謎だ。


「え、えっと……お、お休みをもらうべきか、どうするか……なの」


迷った末に正直に言った結果、アルフレッドの眉間に深いしわができた。


「……休んで、なにをするんだ」

「街に出ようと思ったの」

「なに、街だと? まさか、誰かと一緒に行くつもりなのか? 相手は、誰だ」