「ふん、どっちにしろ、動機は不純だ」
アルフレッドは椅子の肘掛けを指でトントン叩き、たいそう不機嫌そうにしている。
普通の令嬢ならば萎縮して黙り込むところだが、シルディーヌは平気だ。
だってアルフレッドはいつもそんな感じで、これが素の状態といってもいいのだから。
笑った顔を見たのは、シルディーヌへのいたずらが成功した時くらい。
昔からちっとも変わっていない。
「私なんて、田舎の子爵令嬢だから、邸でじっとしていても縁談が降るように来るわけでもないでしょ。ぼやぼやしていたら、あっという間に年をとって行き遅れてしまうわ」
「そんなことないだろう。物好きがいる。密かに思ってる奴がいる」
「うそでしょ。それ、本当なの!? 誰のこと?」
シルディーヌは、サンクスレッドの面々を思い浮かべた。
若い男性は、だいたいみんな村一番の美人であるレベッカを好いている。
レベッカの周りにはいつも男性がいて、ちやほやしているのだ。
それに引き換え、シルディーヌに寄ってくる男性は、いたずらを仕掛けてきたアルフレッドくらい。
だから、そのアルフレッドがいなくなってからこの五年間は、誰も……。
「おい、探すな。例えばの話だ」
「……よね、分かってるわ……。だから、田舎じゃ出会いがないの。子爵の身分じゃ、王宮の舞踏会や晩餐会なんて呼ばれないもの」
「……無理やり男と出会う必要はないだろう」