そこまで言ってフリードは言葉を切った。

そして、なにを想像しているのか分からないが、黒い瞳を鋭く光らせたまま大きく顔を歪める。


「え? え? どうなるかって、いったいなにがですか?」

「いえ、すみません。言っておいてなんですが、それはこちらの事情ですから、どうかお気になさらず。とにかく、シルディーヌさん。街では、ふたり以上での行動をお願いします。必ずです。いいですね!?」


フリードに肩を掴まれんばかりの勢いで念を押されて、ドキドキしながらも、何度も大きくうなずく。

その様子を見て安心したのだろう、フリードは「失礼します」と言って足早に去っていった。

その背中を見送って団長部屋に向かいながら、どうするべきか悩む。

キャンディの昨夜の話から、行動範囲を広げることに決めたシルディーヌ。

アルフレッドに交渉をして休みをもらい、街に出ようと思っていたのだ。

『綺麗な娘』限定ならば、シルディーヌにはあまり関係ないようにも思う。

だが、アクトラスにもフリードにも真剣な顔で注意されてしまうと、しばらく街に出るのはよした方がいいように思う。

しかし確実に婿探しをするために、これからは一日も無駄にしたくないのが本音だ。


「どうしようかしら……?」


ペペロネたちと一緒に街に出るという考えもあるが……。


団長部屋の前でぴたりと止まって、休みの交渉をするべきか考える。

すると突然目の前にある扉がパッと開き、中から伸びて来た手に腕を掴まれ、シルディーヌはそのままぐいっと部屋の中に引き込まれた。