「アクトラスさん。なにか事件があったんですか?」

「はい、凶悪な事件です。今街では、綺麗な若い娘が突然いなくなるということが頻発していまして、団長から見回りの強化と捜査をする様に命じられたんです」

「いなくなるって……もしかして人攫いなんですか?」

「はい、おそらく。背後には人買いの大きな組織があると睨んでいます。見目麗しい嫁入り前の娘ばかりを狙って売るなど、絶対に許しがたいことです!」


アクトラスは瞳をギラリと光らせて大きな拳を握り、燃えるような闘志を見せる。


「今日は俺の隊が一日中目を光らせてきますから、犯人たちにはなにもさせません。聞き込みもして、事件解決に全力を注いできます!」


人攫いの件は国家警備隊が捜査をしているが、なかなか犯人にたどり着くことができず、アルフレッドに応援要請が来たという。

それに、今日のような天気の悪い日は要注意日で、雨が降れば街の通りに人が少なくなるうえに、雨傘などで視界が悪くなるため、比較的犯罪が起きやすいらしい。

今日はアクトラスの部隊と国家警備隊が協力して、街を警戒するのだ。


「シルディーヌさんも街に出ることがあったら、どうか気をつけてくださいよ。もしもシルディーヌさんが攫われたら、本当に、シャレになりませんから」


そう言って、アクトラスはシルディーヌの小さな手を握った。

その真剣な様子に、思わず息をのむ。

それほどに、事件は深刻なものなのだ。