『どう? アルフ、良い香りでしょ? 素敵でしょ? 居心地がよくなったでしょ?』
『ふん、特に変わらんな』
チラッと視線を投げただけで、会話は終了。
お花を飾っても美術品を置いても、アルフレッドの心は癒されず、却って居心地が悪くなると言う始末。
やっぱりドSな性格だと、一般的な感覚とは違うんだろうか?
アルフレッドを快適にさせているマクベリー邸の侍女たちは、本当に凄腕なのだろう。
勝てる気がしない。
シルディーヌは早くもへこたれぎみだ。
王宮に来てまだひと月ほどなのに、すでに何ヵ月も経っているような気分になる。
毎日が充実しているとも言えるが、このままでは月日はあっという間に過ぎていく。
そして、気づけば一年が経ち、サンクスレッドに帰って太っちょカーネルと問答無用で即婚約……!?
そこまで想像して、シルディーヌは身震いをした。
駄目だ、嫌だ。さっさと婿探しをしなければならない。
だが、黒龍殿と侍女寮の往復だけではいい出会いが望めない。
本格化させるには、どうしたらいいのか。
シルディーヌがチキンパイを咀嚼しながら考えている傍らでは、キャンディが先輩侍女の話を披露している。
うっかり聞き流していたが、ペペロネたちの反応が興奮気味なので、シルディーヌは本格的に耳を傾けた。
「……それでね、デートの終わりに、夕日の見える丘で『結婚してくれないか』ってプロポーズされたんですって!!」
ペペロネたちから「キャーッ!」と叫び声に似た歓声があがった。