シルディーヌが一日の内で一番好きな時間は、侍女仲間と一緒に夜の食堂にいる時。
今夜のメニューはオニオンスープとチキンパイ。
パイは、ゴロゴロ野菜の入ったクリームソースがけという豪華さで、シルディーヌのテンションが一気にあがった。
取り皿にパンを目いっぱい乗せて、オニオンスープもなみなみと入れる。
それを見たキャンディが盛大に驚いてくれるのは、毎晩恒例となってきた。
これほどに毎日お腹ペコペコになるなんて、アルフレッドに追いかけられて野山を駆けていた子どもの頃以来だ。
サクッと香ばしいパイにナイフを入れて口に運び、じんわり広がる幸せを噛みしめる。
すると向かいに座っているペペロネが、スープ皿にスプーンを入れながら訊ねてきた。
「ね、シルディーヌどうなの?侍女増員の希望はどうなりそうなの?」
訊かれたシルディーヌは「う……」とうめき声を出して、ゴロゴロ野菜にさしたフォークをぴたりと止めた。
侍女長に増員を願い出てから、数日が経っている。
「え、もしかして、駄目なの?」
キラキラしていたペペロネの顔が少し曇った。ペペロネとしては毎日気にしていたことで、そろそろ進展がありそうだと思って聞くことにしたという。