そんなふうに、アルフレッドにはイジワルばかりされていた。
五年前にアルフレッドが王都の騎士学校に通うことになって離れ、もう二度と会うことはないと思っていたのに……。
王宮侍女になっても、接点などないと考えていたのに、まさかこんな羽目になるとは……。
「だから、何度も言いますけど、スパイじゃありません。私が王宮にきたのは、婿探しのためなんですから」
「あ? 婿探し? 王宮でか」
急にトゲを含んだ声になり、アルフレッドの眉間にシワが寄った。
それはシルディーヌにとってはおなじみの表情。
昔を鮮明に思い出したこともあり、つい上下関係を無視した気安い口調になってしまう。
「あら、アルフは知らないの?」
「なにがだ?」
「多くの貴族令嬢は王宮の侍女になって、行儀見習いをしながらお婿さんを探すのよ。王族付きの若い侍女には貴族令嬢が多いわ」
「そんなことは知らないな。浮わついた理由で仕事をされたら迷惑だ。今すぐサンクスレッドに帰れ」
「嫌よ、迷惑かけてないもの。王宮侍女になるのは労働の厳しさを知るためでもあるし、真剣なんだから。みんなもちゃんと真面目に仕事してるの。でないと、素敵な貴公子に『嫁に欲しい』って思ってもらえないし、良い縁談も持ちかけられないじゃない」