にわか侍女だが、プライドはあるのだ。
マクベリー邸の侍女に対し、対抗心がメラメラと燃えあがった。
腰に手を当てて精いっぱい背伸びをし、アルフレッドに目線を近づける。
すると、いつになくたじろいだ様子を見せたから、気持ちに勢いがついた。
「あら、私だってすぐに優秀な侍女になるわ。この宮殿だって、素晴らしく快適な空間にしてみせるもの!」
「あ? なにを言ってるんだ。お前は、ちゃんと俺の話を聞いていたのか?」
アルフレッドは眉間にシワを寄せ、一気に不機嫌極まりない表情になった。
「ええ、しっかり聞いていたわ」
怯むことなく答えるシルディーヌを見、アルフレッドは顎に手を当ててしばらく考える素振りをした。
間もなくして、いっそう低い声で問う。
「それなら、どうして、妙な決意表明になるんだ? 説明してみろ」
「それは……だって、アルフがマクベリー邸の侍女を褒めるんだもの。今はまだ新米だけど、私だってちゃんと仕事ができるわ」
「む……お前は、俺に、認められたいのか?」
アルフレッドの目が少し見開かれ、声が少し柔らかくなった。
手がゆっくりと動いて、シルディーヌの背中に触れるかどうかの位置でぴたりと止まる。
手のひらは握ったり開いたり、近づけたり離れたりと、忙しなく動いている。
だが、気配を殺す優秀な騎士の技により、シルディーヌはまったく気づくことができない。