いつも黒い団服姿のせいか、上着を着ていない白シャツ姿がやけに新鮮に感じる。

嵐の後のようだった髪は手櫛で整えられており、表情はいつものワイバーンな雰囲気に戻っていた。

威圧感を覚えつつもじーっと見つめていると、アルフレッドはじりっと間合いを詰めた。

だがあくまでも自然な動作ゆえ、距離を縮められたことにシルディーヌは気づいていない。


「俺はここには住んでないぞ。着替えを少し置いてあるだけだ」

「……そう、なの?」


シルディーヌは拍子抜けした声を出した。

わざわざ止めたのだから、もっと重要なことを言うと思っていたのに、それだけ?と。

やっぱり、今日のアルフレッドは少しおかしい気がする。

でも、どうしておかしいのかは、まったく分からない。


「王宮の外に俺の邸があるから、そこから通っているんだ。ずっとここにいたら、息が詰まるからな」

「え、騎士団の寮じゃなくて……外に、アルフの邸があるの!?」


間借りではなく、マクベリー邸が!?

シルディーヌは飛び上がるほどにびっくりしていた。

若干十九歳の独身の身でありながら、自分の邸を持つなんて、貴族院の貴公子でもなかなかできないことだ。

ついさっき『それだけ?』と思ってしまったのが、申し訳なく思う。