気になって仕方がないほどに、黒龍殿のことを思っているのだ。

ここには軍の機密がたくさんあるし、騎士団長として、立派な心構えを持って仕事をしているのだろう。

幼い頃からずっとイジワルアルフの印象しかないが、意外にも心配性で責任感が強い一面もある。

団長に相応しい人なのだと見直してしまう。

改めて立ち姿を見れば、帯剣した正式な騎士の格好はとてもスマートで凛々しい。

以前ペペロネが言っていたように、これで颯爽と馬に乗っていれば、さぞかし素敵に見えるだろうと思う。

清んだ青い瞳にずっと見つめられていると、中身がドSだと知っているシルディーヌでも、うっかり魅了されそうになる。

騎士団長として立派で、見た目は素敵ならば、令嬢侍女たちが恋してしまうのも分からなくはない。


シルディーヌが密かに納得していると、アルフレッドは上着を脱ぎ始め、腰に付けていた剣を外してベッド脇の壁に立て掛けた。

その様子をぼんやり見ていたシルディーヌは、ハッと思い出した。

そうだ、ここは、アルフレッドの部屋だった。


「ごめんなさい。ここはアルフの部屋よね。私は仕事をするわ」


そそくさと出ようとするシルディーヌの前に、アルフレッドの腕がある。

それは、とおせんぼをしているようで、シルディーヌは首を傾げて振り返った。