アルフレッドは悪魔的な顔でニヤリと笑う。

いったいどんな尋問したのか。怖い犯罪者がすぐに落ちるなど、強大な恐怖心を与えたのだろうか。

想像しただけで身震いしてしまい、シルディーヌは訊かないことに決めた。


「でも、すごく髪が乱れているわ。とっても急いで戻ってきたみたい。だから、また戻るのかな?って思ったの……」

「ちっ、これか」


アルフレッドはうめくような声をあげ、バツが悪そうな表情をする。

今日のアルフレッドは、なんだか様子が変だと感じる。

いつもワイバーンのような怖い顔一辺倒なのに、表情があるというか、ちょっぴり色があるというか。


「……俺が馬を飛ばして帰って来たのは、別のワケがあるからだ」


アルフレッドは指先で前髪を整えながらも、シルディーヌから視線を外すことがない。

夏空のように青い瞳は、ピンクブロンドの髪、翡翠色の瞳、ルビーのように赤い唇、そして細い腕へと、なにかを確かめる様にゆっくり動いている。


「別の理由って?」

「俺は、ここに心配な事がある。それは、厄介で、難儀で、面倒だ。でも、少しも放置することができない。手の届くところにいないと、気になって困るほどだ」


そう言って、シルディーヌに一歩近づく。

アルフレッドの声も瞳も真剣なもの。

まっすぐに見つめられて、シルディーヌは胸の中でアルフレッドの言葉を噛みしめた。