この部屋と副団長の部屋は、清掃スケジュールから外されている。

もしも、うっかりなにかを壊したり失くしたら、困るのはシルディーヌだけではない。

どうして急にスケジュール変更させるのか、謎過ぎて、どうにも腑に落ちない。


「やっぱり予定通り、入り口周りの掃き掃除と、廊下のモップがけをするわ。なにかあれば大変だもの」

「いいえ! 団長は、シルディーヌさんにできないことは命じません。どうか、この部屋をお願いします。でなければ、俺が団長に叱られますから」


フリードは必死な形相で腕を広げて、部屋を出ようとするシルディーヌを止める。


「本当に、いいのかしら?」

「はい。不安なら、なにも触らずに、ソファに座って待っていても構いませんから。団長が戻られるまでの間です」


フリードは、とにかくこの部屋から出るのは止めてほしいと言う。

そうさせる理由は、フリードに聞いてもなにも言わない。

それどころか、自分でお気づきくださいと言う。

シルディーヌは頭の中に大きな疑問符を浮かべつつも、フリードの言葉に従うことにした。

かといって、ソファに座って待っているわけにもいかないが。


「分かったわ。アルフをここで待っていればいいのね?」


フリードが出て行き、シルディーヌは改めて団長部屋の中を見回した。

アルフレッドがマメに掃除をしているようで、隅っこにも埃がない。