団員は窓の方で一列に並んでおり、シルディーヌのことをじろじろ眺めていた。
「基本的に団員はここで食事をし、出動するまで控えています。今ここには七十名ほどがいますが、みんな細々とした任務がありますので、午後にはほとんどいなくなりますよ」
フリードが説明してくれる間も注がれる団員からの無言の視線は、言いようのない圧迫感を与えられる。
荒くれ者の多い黒龍騎士団員たち。
ひとことも発しないので、なにを考えているのか分からず、たいそう不気味だ。
それに、今まで会った騎士の反応から察するに、アルフレッドは清掃担当の侍女が来ることを説明していないと思われる。
フリードだって、片付けさせるのに精いっぱいで、きちんと説明したのか怪しいものだ。
今食堂の中にいる団員は、侍女がここに来たことを訝しんでいるかもしれない。
そう思えば、この視線の痛さを納得できた。
シルディーヌは、とりあえず挨拶をすることに決め、居並ぶ団員の方を向き、引きつりながらも精いっぱいの笑顔を見せる。
「はじめまして、みなさん。私はシルディーヌ・メロウと申します。今日からこの宮殿の清掃担当となりました。よろしくお願いします」
団員の間から「清掃担当?」「なんだ、団長の女じゃないのか?」「へえ、見学じゃないんだ」などのささやき声が上がった。