青い空に浮かぶ白い雲がゆっくり流れ、虹のような花畑は変わらず美しい。
時折風に吹かれ、シルディーヌの話に相づちを打ちながら手作りのランチを食べ、のんびりと過ごす。
たまにはこんな時間もいいものだと思う。
もちろん、隣にいるのがシルディーヌ限定でのことだ。
それから最初に見た池に行き船に乗り、出店で買い物をして夕暮れに帰路に着く。
馬車に揺られてうとうとし始めたシルディーヌが、アルフレッドの肩に頭を預ける。
その重みを感じながら、すやすやと眠る長い睫毛に白い肌を見ているうちに誘惑にかられ、なんとも我慢できず、アルフレッドはそっと顎を持ち上げて唇を奪った。
「お前が無防備に寝るのが悪い」
それから二度ほど口づけをしても、シルディーヌは起きる気配がない。
いっそこのままマクベリー邸に連れて行き、すべてを自分のものに……と考えるが、欲望の底に沈み込んだ理性を引っ張り上げてなんとか思い留める。
シルディーヌが侍女の仕事を終えるまであと数ヶ月間、甘くてじれったい恋人期間を楽しむのも悪くない。
アルフレッドの溺愛日和は、まだまだずっと先。
「そのときは容赦しないから、覚悟しろよ」
シルディーヌの耳もとでつぶやき、四度目の口づけをする。
そして、王宮に着いて起こしたシルディーヌに「愛している」と何度もささやきながら、五度目の情熱的な口づけをしたのだった。
このとき骨抜きになったシルディーヌに、一度目ではなく五度目の口づけだったと知られたのは、随分後のこと。
ぷっくり膨れたシルディーヌに叱られるが、その顔が一番かわいいと思うアルフレッドだった。
【完】