「全部、お前が、作ったのか?」
「そうなの。食堂のシェフにお願いして食材を分けてもらったの。作り方も教えてもらったわ。だからきっとおいしいはずなの……はいっ、どうぞ!」
シルディーヌが思い切ったように差し出したパンを、アルフレッドは中身を零さないよう慎重に受け取った。
シルディーヌじっと見つめる中、ぱくりと頬張る。
咀嚼をするところを、シルディーヌが息を詰めて見ているのを感じる。
「……うまいな」
お世辞でもなく心の底から言った声は、アルフレッド自身も驚くほどに小さなものだった。
それでもシルディーヌには伝わったようで、ほーっと大きな息をついて胸を押さえた。
「お前も食べろ。そんなに不安がるとは、味見してないのか?」
「したわ。だけど、好きな人に初めて作ったんだもの。いいと思ってても緊張するわ」
そう言って微笑み、シルディーヌはパンを口に運ぶ。
それからシルディーヌはいろんな話をする。
友人のペペロネがフリードに恋をして猛烈アタックをした結果、実りそうだとか。
友人のキャンデイも舞踏会で素敵な人を見つけただとか、主に恋の話だ。