丘まで続く小道には出店がたくさん並んでいる。

興味深そうにキョロキョロするシルディーヌが人にぶつからないよう誘導しつつ進む。

犬のようにコロコロ走り回ることはないが、夢中になっているからハラハラする。

それでもシルディーヌの好きにさせながら進んで行き、やがてたどり着いた丘に広がっていた景色を見て、さすがのアルフレッドも息をのんだ。


「わあ、すごい……これが、マンデリアのお花なの?」

「ああ、そうらしいな」


一面の広い丘の上に、紫、白、黄、赤、桃、青……と縞模様に花が植えられている。

青い空の下に色鮮やかに咲くその様は、まるで空に浮かぶ虹が舞い降りたかのよう。

雷の影響はまったくなく、丘を吹き渡る風が美しく咲く花を揺らせば、波のようなうねりが起こる。

まるで花が歓迎のダンスを踊っているかのよう。

花畑にも小道が作られており、自由に散策ができる。遠い遥か先で歩いている人が小粒に見えるほどに広い。

シルディーヌはアルフレッドの腕から離れ、花の香りを楽しんでいる。

蝶が舞い、ミツバチが花粉を運ぶ。

のどかで美しい。楽園とはこういう場所を示すのだなと思いながら、シルディーヌともに小道を歩く。


「本当に素敵……来てよかったでしょう? アルフ」

「ああ、そうだな」


相づちを打ちながらも、アルフレッドは変わらぬ景色に飽きていた。