フリードがお節介をするのも仕方がないことだと、改めて自覚した。

そんな胸の内を知らずに、シルディーヌはわくわくと胸を躍らせている様子だ。

菜の花色が綺麗なワンピースを着た足元には、小さめのバスケットが置かれている。

なにが入っているのか尋ねたが、シルディーヌは丘に着いてからのお楽しみだと言って教えない。


そんなこんなで馬車は走り、やがて目的地に到着した。

丘は駐車場から少し離れた場所にあるらしく、シルディーヌとともにゆっくり歩いていく。

『マンデリア花祭り』と書かれた大きなアーチを潜れば、公園のように整備された場所に入った。

予想通りに人が多く、シルディーヌがアルフレッドの腕にぎゅっとしがみ付いた。

王都の商店街でのことが思い出され、アルフレッドも慎重になる。

まああれほどの人出ではないが、祭りには酔っ払いがつきもの。

他人と関わらないようにした方がいいのだ。


「見て、アルフ。池があるわ!」


シルディーヌは、進む先に垣間見える大きな水たまりを目ざとく見つけて指を差した。

小さな船が数隻浮かんでおり、船着き場には小舟がたくさんあるのが見える。

お金を支払えば舟遊びが楽しめるようで、後で乗ることを約束した。

ほかにも子供が走り回って遊べるような広場があったりと、祭りなどなくとも十分楽しめる様な造りになっている。

さすが人気の観光地と言われるだけある。

これならば花が残念でもなんとかなるだろうと、アルフレッドは密かに息をついた。