ハッとしたように顔を上げたシルディーヌの涙に濡れた瞳が、アルフレッドをじっと見つめる。
今までアルフレッドが何度も口にしてきた言葉。
当初は侍女の仕事をさせるのが忍びなく、また婿探しを阻止する目的もあった。
問いかけるたびにシルディーヌは首を横に振ってきたが、果たして今回はどうか。
「今のようなことがあったとき、俺が傍にいれば守ってやれるが、そうでないときもある。俺の邸にいれば、常に侍女が傍にいてお前を守ってくれるぞ。まだ結婚前だが、俺の邸に来るか?」
アルフレッドはシルディーヌの涙を指先で拭い、柔らかな髪をなでる。
爪の先から髪の一本に至るまで、シルディーヌのすべてが愛しい。
全身全霊で愛し、守ってやりたいと思う。
「ありがとう、アルフ……でも私、侍女はまだ辞めたくないわ。一年の約束だもの。雷が怖いからって、途中で投げ出したくないわ」
シルディーヌはくすんと鼻を鳴らしながらも、しっかりした意思を見せる。
今にも倒れそうな顔色をしているのに、がんばると言う。
華奢な体でか弱く見えるのに、結構頑固者である。
なかなかアルフレッドの思い通りにならず困ったものだが、投げ出したくないと言う意思は尊重したいと思う。