「お前は、俺が花には興味がないと、知ってるだろう? 数日で枯れる花のどこがいいんだ?」
「お花はすぐに枯れてしまうから、咲いてる時がすごく綺麗で感動するのよ。朝お花を飾ってる時に、そう言ったでしょう? それにね、私、マンデリアの花は、一度も見たことがないの。だから……アルフと一緒に見たいわ」
「む……お前は、俺と、見たいのか?」
「ええ、そうよ。フリードさんは、恋人におススメの場所だと言っていたわ。みんな一度は訪れるって。だから私も、好きな人と見たいの。感動が増すと思うわ」
ダメなの?と切なげに見つめられ、アルフレッドは一気に陥落する。
華奢な体をぎゅっと抱きしめ、ピンクブロンドの髪に何度も口づけた。
「分かった……一緒に行こう。俺も、お前と見たくなった。お前と一緒に見るなら、格別な花見だろうな」
優しく語り掛けると、シルディーヌは「うれしい」と言って胸に顔をうずめてくるから、アルフレッドの心臓が鷲掴みにされる。
いつまでも腕の中に入れておきたいアルフレッドだが、今は早急に仕事を片付けねばならない時だ。
アルフレッドは執務机に向かい、待ち合わせの日時をメモしてシルディーヌに渡した。
メモを見つめて大事そうにエプロンのポケットに仕舞うのを見届け、一刻も早く仕事を片付けるべく書状に集中した。