「なんだ、さっきから。新しい紅茶の味は、悪くないぞ。それ以外に話があるなら、さっさと言え」


話をするように促すと、シルディーヌはカップをソーサーに戻した。


「えっと、あのね、アルフはマンデリアの花祭りって知ってる?」

「マンデリア……だと?」


訊き返すと、シルディーヌはこくりと頷いた。

このタイミングで花畑の祭りの話をしてくるとは、フリードから聞いたのだと思える。

最近フリードは、アルフレッドが尋ねてもいないのにおススメのデート情報を教えてくるのだ。

おそらく無頓着な騎士団長を見兼ねてのことだと思うが、シルディーヌにも情報提供をしていたとは、まったくお節介な男だ。

アルフレッドは密かにため息をつき、飲み干したカップをソーサーに戻した。


「……知ってるぞ。花畑の満開祝いだろう」

「そうなの! 今が見ごろで、とっても綺麗だって、フリードさんが教えてくれたの!」


シルディーヌは、ぱーっと花が咲いたような笑顔になる。

その輝きを増した翡翠色の瞳が大変かわいらしく、アルフレッドはずっと眺めていたくなる。

そして無性に柔らかな肌に触れたくなるが、今はぐっと堪えた。