部屋の前にたどり着く頃合いを見て扉を開けると、シルディーヌがきょとんとした顔をする。
毎度のことだが、アルフレッドがシルディーヌの気配を読み取るのが余程不思議なようだ。
「ほら、早く入れ」
「あ、ありがとう。アルフ」
今日のシルディーヌは少し表情が硬く、緊張しているように見える。
いったいなにを考えているのか、アルフレッドは怪訝に思いながらシルディーヌの向かい側に座った。
脚を組み、いつも通りにお茶の準備をする姿を観察する。
細くてしなやかな白い指がテーブルの真ん中にある花を隅にやり、手慣れた様子でカップに紅茶を注ぐ。
ふんわりと漂ってくる香りは、木苺のような甘酸っぱいものだ。
どうやら新しい紅茶を手に入れたらしい。
もしやそれで緊張しているのか?
「今日はね、新しい紅茶なの。それにクッキーも持ってきたのよ。昨日お休みしたキャンディが商店街に行って、買ってきてくれたの」
花柄の菓子皿をうれしそうに置き、アルフレッドに食べるよう勧める。
ここまでのシルディーヌは普段通りにも見えるが、カップに口をつけながら上目遣いにじっと見つめてくる様は、やはり少しおかしい。
こういう態度をとるのは、たいてい話しにくいことがあるときだ。