書状は、貴族院が提案してきた国防予算案の確認と修正などの重要な物や、アルフレッド自身が計画案を作成する入団試験など、時間のかかるものが多い。

昼食もそこそこにして集中して仕事をするアルフレッドだが、ふと部屋に人が近づいてくる気配を感じ、青い瞳をやわらげた。

近づいてくるのは、副団長のフリードでも部隊長でもない、能天気な愛らしい気配を持つ者。

壁を見やると、そこにあるシンプルな四角い時計は、午後の三時を示そうとしていた。


「ふん、もうこんな時間なのか」


“ひとりで過ごす休憩時間は、とてもつまらなくて寂しいの”などとかわいいことを言って、団長部屋で一緒にお茶を飲むようになってからずいぶん経つ。

アルフレッドはタイミングを見計らって席を立ち、扉の方へ向かった。

トレイに二人分のお茶セットを乗せてくるためか、毎度毎度危なっかしい足取りで来るからハラハラするのだ。

お茶のたびにアルフレッドが階下に下りて行くという手もあるが、仕事に没頭すると時間を忘れる危険がある。

しょんぼりしながらお茶を飲む姿を想像すれば、なんともいたたまれない気持ちになるからアルフレッドが耐えるしかない。

いっそのこと侍女を辞めてほしいとさえ思う。

王宮勤めの最大の目的である“婿探し”は、済んでいるはずだから。