ペペロネが話すには、黒地に紺碧の刺繍の入った団服を着、黒い馬にまたがる黒龍騎士団の姿はなんとも雄々しくて素敵で、ひと目で恋に落ちてしまう令嬢もいるという。


「じゃあ、あの鬼神の団長にも、恋をする侍女がいるのかしら?」


シルディーヌがわくわくしながら尋ねると、ペペロネは「もちろんよ。しかも一番人気らしいわ!」と言って首を縦に振った後、すぐに「だけど」と顔を曇らせた。


「黒龍の騎士団長は、カタブツっていうか、全然靡かないらしいわ。王妃さま付きの伯爵令嬢が猛烈にアプローチしたのだけど、眉ひとつ動かなかったって。そればかりか、『お前よりもカエルのほうが百倍ましだ』って一蹴されてしまって!」

「えーっ!?」と、みんなの口から一斉に驚きと非難の言葉が飛び出る中、シルディーヌはひとりで納得して顔を引きつらせていた。

いかにも、アルフレッドの言いそうな言葉なのだ。


「そんなこと言うなんて!」

「いくらなんでもひどすぎるわ!」

「でしょう? お気の毒なことに、その伯爵令嬢はショックのあまりに実家に帰ってしまったそうよ。それでも、団長に恋をする子が絶えないみたいで、気をつけるようにと忠告されたわ」