嫌な予感しかしなくて、シルディーヌはため息を吐きながら肩を落とした。


「まあ、シルディーヌったら、気を落とさないで。先は長いんだもの。いつかは素敵な貴公子さまに出会えるわ」

「そうよ。今日はたまたまタイミングが悪かっただけだわ」

「シルディーヌはきっと西宮殿の専属になるわ。そうすれば、毎日チャンスがあるわよ!」

「……ありがとう」


みんな優しい。心配げに眉を寄せて励ましてくれるから、シルディーヌは笑顔を作って見せる。

すると、ペペロネが「あ、そうそう、そうだわ」と、突然思い出したように話し始めた。


「先輩侍女からうかがったのだけど。たいていの貴族侍女は、貴公子さまよりも騎士団員の方に恋をしてしまうらしいわ」

「まあ! 騎士団員って、あの黒龍騎士団の?」

「荒くれ者が揃ってるって噂だけれど、そんなお方と?」


みんなの興味がペペロネの話に移り、シルディーヌも思わず身を乗り出した。


これは聞き捨てならないことだ。

まさか、アルフレッドにも恋人がいるのだろうか。

いつも不機嫌そうで怖い、あのアルフレッドにも!


「そういう方ばかりじゃないみたいなの。それに騎士団員の方って、逞しいでしょう。強いところを目の当たりにすると、コロッと参ってしまうんですって。それに団服姿も素敵だし、深窓のご令嬢ほど、彼らに魅力を感じて恋をしてしまうらしいわ」