「お疲れでしょう。ペペロネ嬢もしばらく休憩していってください」


ペペロネを連れてきた愛想のいい年配の警備隊員は、お茶を持ってくるからと言い置いて出て行った。

間もなくしてペペロネのお茶が運ばれてきて、シルディーヌのカップにもおかわりが注がれる。

警備隊員が出ていくと、ペペロネが早速カップに手を伸ばして一口飲み、ふぅっと息をついた。

ふたりとも稀有な体験をしたので、あちらこちらで何度も同じようなことを訊かれてちょっとウンザリぎみだ。

それでも妙な嗜好を持った金持ちに売られるよりは数億倍マシで、救ってくれた黒龍騎士団には、口では言い表せないほどに感謝している。

助け方が、刺激的かつ個人的感情に傾き過ぎていたのが、少々難点だが。

ペペロネなどは、危うくアジトとともに木っ端みじんになりかけた身である。

そのことを本人が知らないようなのが、シルディーヌには一番ありがたいことだった。


「ね、シルディーヌ。もしかして、もしかしてだけど……あなた、黒龍の騎士団長に、ものすごーく愛されちゃってるの?」