日が暮れてもシルディーヌが王宮に戻ってこない。
正門の警備員から報告を受けたアルフレッドは、すぐさま宮殿内にいた騎士全員を室内鍛錬場に集めて捜索を命じた。
そして“さらわれた”との情報を得ると、すぐにフリードに出動命令を下した。
団員を総動員し、アジトに到着するや否や『大砲を五発撃って、そのまま待機してろ!』と命じて、ひとりで突入していったという。
『団長は、出動準備を進めている最中にもおひとりで動こうとされ、お止めするのに大変苦労しました』
そう言って苦笑いをしたフリードを、シルディーヌは心からねぎらった。
『団長の世界は、シルディーヌさんを中心に回っています』
真顔でそう断言したフリードは、くれぐれもこの先危険な目にあったりしないようにお願いします、とシルディーヌに釘を刺して宮殿に戻って行ったのだった。
「私を助け出すために、大砲まで持ち出すなんて……」
冷静さを欠いてしまうほど、そこまで愛されているのか。
謎の強大な愛情を向けられているのは、うれしいような困るような、自分で自分の気持ちがよく分からないシルディーヌである。
「どうして、そんなに思われてるのかしらね……」
愛情を注がれ過ぎて、そのうち壊れてしまうんじゃないだろうか。
そんな苦笑いを零していると、事情聴取を終えたペペロネが戻ってきた。