『え? え? ここはどこ??』


なじみのない天井で、両脇にはクッションの壁しかなく、またさらわれておかしな場所に来たの!?

そう思いつつ、ふかふかの海から抜けそうとして、あたふたと必死にもがいていると、強靭な腕にぐいっと引かれて起こされた。


『まったく、なにやってんだ。落ち着け』


そこは団長部屋の中にある寝室で、ふかふかクッションは宮殿内にあったものを、アルフレッドがかき集めたものらしかった。

アルフレッドが言うには、『ぐーすか寝ていてまったく起きず、男子禁制の侍女寮の中まで運び込むわけにもいかず、やむなくここに寝かせた。クッションは、尻が痛いとべそをかくと困るからしいた』とのことだった。

シルディーヌが安心しきって眠ってしまったことは事実でぐうの音も出ず、『それは、とても迷惑をかけたわ。ごめんなさい』と素直に言うと、もにょもにょと『そうでもない』と返ってきた。

アルフレッドは一睡もしていなかったようなのに、普段通りに執務をこなしていた。

アジトを壊滅して戻った団員たちには一日休息を与え、副団長のフリードは、報告やら警備隊との調整やらに奔走していると聞いた。

原因を作ったシルディーヌはのほほんとしているわけにもいかず、少しでも本来の仕事をするべく宮殿入口の窓ふきをしたのだった。


ぐっすり眠って元気いっぱいのシルディーヌとは対照的な、やや疲れぎみのフリードと会ったのは日が傾きかけた頃。

侍女寮に帰る道の途中、黒龍殿に向かうところを見つけた。

そのときに、シルディーヌがさらわれた夜の出来事を聞いたのである。