パン二個とミルクが乗っているそれをテーブルまで運ぶが、お昼も食べてないからお腹がペコペコのはずなのに、まったく食べる気が起きない。
でも敵の隙ができていざ逃げようとするとき、力が出なくてはお話にならない。
無理矢理でも食べておかないといけないのだ。
シルディーヌはパンを口に含み、ミルクで無理矢理押し流した。
そして、壁に背を預けて膝を抱えて身を縮める。
ベッドも毛布もないなんて、いくらなんでも扱いがひどすぎる。
罪人を入れる檻だって、体を温める布くらいあるはずだ。
「アルフは、助けに来てくれるかしら」
再び、くすんと鼻が鳴る。
シルディーヌがいなくなったと分かるのは、きっと明日の朝だ。
団長部屋に挨拶に来ず、侍女寮にもいないと知ってからだろう。
それでも、すぐに人買いにさらわれたとは思わないかもしれない。
そしてここにいると判明するのはいつだろう。
それまでに、シルディーヌは売られてしまうかも……。
いや、そもそも探してくれるだろうか。
ひとりぼっちのため気持ちがどんどん沈み、悪い方に考えてしまう。
せめてペペロネと同室だったら、気がまぎれるだろうが。
「ペペロネは、大丈夫かしら」
友達の心配と自分の心配をし尽くして心身ともに疲れ、夜が更けるにつれてうとうとし始めた。
それからどれほどの時間が経っただろうか、シルディーヌは軽い振動を感じて目が覚めた。