シルディーヌは大きく息を吸い込んで、力いっぱい叫んだ。
「ペペロネー!! どこー!!? ペーペーローネーーッ!!」
腹の底から出した声は、森の木々に吸い込まれた。
ペペロネに届いただろうか?と不安になるが、間もなくして、近場のいくつかの窓から女性がそっと顔を出してくれた。
不安げな顔やびっくりしている顔などの中に、ペペロネを見つけてホッとする。
シルディーヌの窓から数えて二番目のところで、大きく手を振っていた。
「シルディーヌ、私はここよ! 良かった! 無事なのね!」
シルディーヌとペペロネが互いの無事を喜び合っていると、ふたりの窓の間にいる女性が唇に人差し指を当てた。
「あなたたち、知り合いなのね? でも静かにしていた方がいいわ。騒いでいると逃げられると思われて、縄で縛られちゃうわ」
「縄で……? そんなの嫌だわ」
ペペロネが口を押えて青ざめ、シルディーヌはできるだけ声を潜めた。
「私たち、ふたりで歩いてるところをさらわれたの。これからどうなるのか、あなたたちは知っているの?」
隣の女性が大きくうなずいて、「ここは、人買い組織のアジトなの。捕らわれたら最後、逃げられないわ」と諦め顔で教えてくれた。
そして、シルディーヌの斜め下にいる女性が悲痛な声をあげる。
「そう、逃げられないの! 見て、この果てしない森。こんなところに誰も助けになんか来ないわ。私の隣の部屋にいた子は、昨日いなくなったの。私たちはみんなどこかに売られてしまうの! 次は私の番だって、言われたわ!」