逃げるためには、とりあえず現状を把握しなくちゃいけない。
部屋の中には簡素な椅子とテーブルしかなくて、窓にはカーテンもない。
本当になにもなくて、ベッドもない部屋だ。
ひとまず扉を開けてみようと試みるが、当然ながらも鍵がかかっていてびくともしない。
「椅子で扉を壊せないかしら?」
そう思って椅子を手にしてみるが、腕力のないシルディーヌでも軽々と持ち上げられ、よく見れば脚も細くて頼りなく、これでは扉よりも椅子のほうが壊れてしまいそうだ。
扉を壊すのを諦め、窓開けて外を覗くと、はるか下に地面が見えた。
うんと身を乗り出して窓の配置を確認すると、石造りの大きな壁にいくつも並んでいて、ここが相当大きな建物であることが分かった。
三階建てで、シルディーヌは最上階の部屋に閉じ込められていた。
ここから飛び降りたらまず命はない。
助けを呼ぼうにも見渡す限り夜空と森が広がっており、民家は一つも見えず、叫ぼうが喚こうが誰の耳にも届きそうにない。
しかし、この建物のどこかにいるペペロネには届くかもしれない。
シルディーヌ同様に小さな部屋に閉じ込められているはずで、もしかしたら、ほかにもたくさんの人が閉じ込められているかもしれない。
そのうちの誰かの耳に声が届いて、窓から顔を出してくれたら成功だ。