寒い……。
体がぶるっと震えるのを感じて、シルディーヌは目覚めた。
薄暗いが見知らぬ天井が見え、どこかの建物の小さな部屋の中にいるようだと分かる。
どうしてこんなところにいるのか不思議に思ったが、すぐに何者かに袋状のものを被せられてさらわれたことを思い出した。
シルディーヌは床に寝かされていて、毛布もシーツらしきものもなく、とても体が冷えている。
おまけに、硬い床の上に直に寝ていたためか、ものすごくお尻や背中が痛い。
「イタタタタ。ひどいわ。あんまりだわ」
くすんと鼻を鳴らして起き上がって見回すと、部屋の中にはシルディーヌひとりしかいなかった。
ペペロネはどこにいるのか。
ランプもなく、窓から差し込む月明かりだけが頼りで、心細さと先の見えない恐怖が胸を支配する。
「もしかして、人買い組織にさらわれちゃったの?」
でも、たしかあれに狙われるのは、ひとりで出かけた綺麗な女性限定だったはず。
アクトラスやフリードに何度も注意されているのだ、ひとりで街へ行ってはいけないと。
シルディーヌはペペロネと一緒だったし、決して綺麗な女性ではないのに、どうしてさらわれたのか。
もしかして、騎士団が追っている人買い組織とは別なのか。
「と、とにかく、ここから逃げなくちゃ」
寒さと不安と痛みで震える体を励ますようにさすって立ち上がり、部屋の中をうろうろと歩き回って調べ始める。