ペペロネはオレンジ色でレースの透かし模様のある、ウェストから裾にかけてリボン飾りのあるドレスを選んだ。
王宮の侍女寮への配達をお願いし、大満足のふたりがお店を出たのはお昼もとっくに過ぎた時間だった。
お店の中にいたときは夢中でなんとも思わなかったが、一歩外に出れば空腹なことに気づく。
シルディーヌのお腹の虫が自己主張し始め、咄嗟に手のひらで押さえた。
「お腹、空いたわ」
「まあ! シルディーヌらしいわね。でも私も……」
ペペロネも同じで、ふたりで顔を見合わせて笑いあった。
「とにかく、なにか食べましょう!」
「通りに出れば、飲食店があるわよね」
とりあえず大通りに出ることにし、細く入り組んだ路地をおしゃべりしながら歩いていく。
もう少しで馬車道に出る、その時だった。
にゅっと、黒いなにかが、シルディーヌの横目をよぎった。
「え?」と思ったときにはバサッと音がして、シルディーヌの視界が真っ暗になっていた。
「え、ペペロネ!? どこ!?」
「シルディーヌ!?」
互いに名を呼び合うも、袋状の布のようなものですっぽりと体が覆われていて、無事を確かめることもできない。
恐怖に身が縮まるが、「やめて! 離して!」と叫ぶペペロネの声に励まされ、シルディーヌもバタバタと暴れて必死の抵抗を続ける。
「うるせえ、静かにしろ!」
「暴れるな!」
急にツン!とした匂いがし、もがき続けるも、シルディーヌの意識は遠くなっていった。