「それが、違うの」
ペペロネはバッグの中から一枚の紙を取りだし、ぺらっと広げた。
それは街の地図で、所々に丸が書きこまれているもの。
これは全部王宮侍女たちに評判のいいお店の位置だと、ペペロネが説明した。
「すごいわ! ペペロネ。用意がいいのね!」
シルディーヌが尊敬の眼差しを向けると、ペペロネは得意気に笑った。
「実はこれ、先輩から借りてきた地図なの。ほら見て、この公園近くのところ。ここにあるお店がおすすめらしいの。かわいくてお値打ちなドレスがたくさんあって、穴場らしいわ」
ペペロネが指さすところは、大きな通りから外れた位置にあって、ちょっと分かりにくい場所のよう。
商店街からは遠いが、歩いて行けない距離ではない。
けれどシルディーヌは、アルフレッドから『商店街以外の店には行くな』と渋い顔で言われている。
理由を訊ねると『俺が把握できないからだ』と理解不能なことを言った。
黒龍殿の中ならいざ知らず、王宮の外に行くのに把握もなにもないと思う。
「それにね、ここがイチオシの理由は、全部一点ものだから、ほかの子とデザインが被らないことと、直しが出来あがったら配達してもらえるってところなの! ね、いいと思わない?」
「特注じゃないのに、デザインが被らないの?」
「そうなの。それでいてお値打ちなの!!」