つぶらな瞳が、心配げに上下左右に動いている。

もしかして団長がらみですか?と尋ねるアクトラスに、シルディーヌは悩み事を打ち明ける。

腕組みをして難しい顔つきで聞いていたアクトラスだったが、すぐにカラカラと笑い出した。


「そんなの簡単なことです」

「え、どうすればいいのかしら?」

「シルディーヌさんが、すごーく困って見せて、甘えるようにお願いすれば、団長はイチコロです」

「イチコロ……あの、アルフが?」


アクトラスは大きくうなずいているが、シルディーヌは不安だ。


「でも甘えるようになんて、アルフ相手に難しいわ」

「うーん、それは……いつもと同じように喋ればいいんじゃないですか?」


そう言われても、シルディーヌには難しく感じてしまう。

いつもどんなふうに話しているのか、自分ではよく分からないのだ。


「お、そうだ。『俺が買ってやる』と言い出すかもしれないから、そこはうまくかわす必要がありますね。でもシルディーヌさんならできます」

「……そうかしら?」

「はい、ほかの女なら瞬殺で、話も聞かれずに部屋から追い出されますが、シルディーヌさんなら、まったく、ぜーんぜん問題ありません。お願いされるだけで、団長はデレます。俺が保証します」


アクトラスは、大丈夫です!と右手の親指を立てて見せ、待たせている部下の元へ歩いて行った。