「ペペロネなら、さっき侍女長に呼ばれて侍女長室に行ったわ。ね、それよりシルディーヌったら、どうしたの? 今日は具合が悪いのかしら」


キャンディがシルディーヌを見て顔を曇らせる。


「そんなことないわ。元気いっぱいよ」

「そう? いつもはこの縁ギリギリまで注ぐスープが常識的だし、いつも山のように積んでるパンは、なだらかな丘程度よ?」

「あ……」


言われて手元の皿を見れば、たしかに分量が少ない。

今日はそれほど空腹を感じていないみたいで、自分でもちょっと驚いてしまう。

アルフレッドのことで頭がいっぱいだったせいかもしれない。


「少ないのは、今日はあんまり動かなかったから……かしら。それより侍女長は、ペペロネになんの用事かしら?」


仕事が終わってから侍女長に呼ばれるのは珍しいこと。

もしかして、ペペロネに縁談かも!?などと言って、キャンディたちと盛り上がっていると、当の本人が戻ってきた。

にこにこと上機嫌な様子でテーブルまで来ると、空いた場所に一枚の紙を広げた。


「侍女長からとっても素敵な情報をいただいたの! ほら、見て!」


広げられたそれを、シルディーヌたちは額をくっつけ合うほどに身を乗り出して見る。

そこには、大きく書かれた『王宮舞踏会』の文字と開催日時があった。


「王宮舞踏会……!?」

「ねえペペロネ? 侍女長からいただいたと言うことは、これ、私たちも参加できるのかしら?」