シルディーヌは、こくんと息をのんだ。
言葉にするにはとても恥ずかしい。
けれど、フリードの意見を聞いてみたい。
「ほしいものは……あの、その、わ……わ、私だったり、するのかしら? なんて、そんなこと、ありえ」
「いいえ、あります」
即座に否定の言葉をくっつけようとしたシルディーヌを遮り、フリードはきっぱりと言ってうなずく。
「団長の愛情は生半可なものじゃありません。愛は、常日頃から滝のようにざんざか降り注いでおられます」
「え、滝のように?? アルフが、毎日?」
「はい。団長の様子を見ていれば分かります」
毎日とは、そんなばかな。あのイジワルなアルフレッドが。
それは、フリードが“団長の女”というフィルターを通しているから、勘違いしてるのでは?
そう考えるが、フリードには明確な根拠があるのかもしれない。
「た、たとえば、どんなふうに?」
「そうですね。これだけは、言えます。団長は、ほぼシルディーヌさんの意向に基づいて行動されています」
「私の、意志をもとに?」
「はい……具体的なことはご自分で発見してください。人から聞くものじゃございません」
そう言い残し、フリードは書状の束を抱えなおして宮殿の中へ入って行く。
シルディーヌはその真っ黒い後ろ姿を見ながら、ぽつりとつぶやいた。
「滝のようって……本当なの?」
シルディーヌは、サンクスレッドにある大きな滝を思い出してしまい、ぶるっと身震いしたのだった。