廊下の方から、数人分の足音が聞こえてくる。

パタパタととても忙しなく、執事がなにかを命じる様な声も聞こえてくる。


「今からなにが始まるのかしら……」


時間的に食事の準備かしら?と思うが、慌ただしさが半端じゃない。

様子が気になるシルディーヌだったが、廊下の騒がしさはすぐに止んでしまった。

人の気配がなくなりアルフレッドもなかなか戻って来ず、シルディーヌの興味の対象はインテリアに移る。

団長部屋の快適空間づくりをしているシルディーヌにとっては、マクベリー邸の研究をする絶好の機会である。

けれど居間には、ソファとテーブルに大きな白い暖炉があるくらいで、絵画などの美術品も心和むような装飾品もない。

アルフレッドらしいインテリアと言えばそうだが、なんとも殺風景で観察し甲斐のない部屋だ。

ソファにある花柄のクッションと深緑色の絨毯にえんじ色の重厚なカーテンが、ちょっぴり温かみを感じさせる程度。

この状態が、以前アルフレッドが言っていた優秀な侍女が作る快適な空間なのだろうか。

それならば、団長部屋に美術品を置いたり花を飾ったりしたシルディーヌは、まったく逆のことをしていたことになる。


「アルフは、なにもないのが、好きなのかしら?」


あちこちに点在するサイドテーブルの上には、シンプルな燭台が置いてあるだけ。

あそこにかわいい雑貨や植物を一つ置くだけで、心和む空間に早変わりすると思うのに。