「え!? そんなこと……訳を話せば、なんとか……なるわ」
「甘いな。政務に忙しい貴族院の奴等は、好きでもない女の言い訳まで気にしないぞ。万が一耳に入っても『そそっかしい』『嫁には不向き』と思われるのがオチだ。どっちにしろ、不利だな」
「そんな……そう、よね……」
アルフレッドの言うことは一理あり、がっくりと肩を落とす。
シルディーヌは目がくりっと大きくて愛嬌のある顔立ちだが、とびきりの美人ではない。
ほっそりしているが背は低く、スタイル的にはごく一般的だ。
自慢できるところは母親譲りのピンクブロンドの髪と翡翠色の瞳だけ。
一度ついた悪評を簡単に吹き飛ばせるほどの器量は持ち合わせていない。
「何においても、第一印象は大事だ。覆すのは時間がかかるな」
アルフレッドは肩をすくめて見せる。
「困るわ……成果がなかったら、お父さまの勧める人と結婚しなくちゃならなくなる。そんなの嫌だわ」
「なに? 決まってるのか! どんな奴だ」
「決まってるわけじゃないけど、たぶん……太っちょカーネル……かも」
「アイツか! 情けない奴じゃないか。やめておけ、断るべきだ」
「だから、決められた人より好きな人と結婚したいって言ったら、一年だけ試してこいって言われたの。好きな人を見つけられなかったら、問答無用で婚約させられるかも」