長く感じた一週間が終わる。
その最後に追い討ちをかけるかのように午後は英国数の3教科の実力テストが行われた。

いつもならもっと兄に勉強を教わるところだが今回は授業編成の変わった兄の予定が忙しいこともあり、なかなか見てもらえなかった。

「あーもう無理…」

最後の英語が終わり、答案を前に送ったところで机に突っ伏した。
そのままの体制で目を開けると眠たそうに欠伸をしながら答案を前に出す遊佐と目が合った。

遊佐が回答終了20分前から机に臥して寝ていたのを知っている。

「遊佐諦めるの早くない?」
「何が」
「寝んの早すぎでしょ」
「お前と一緒にすんな。大して時間かけるような内容じゃなかっただけだ」

何言ってんのこいつ。

「余裕で終わったから寝てたって?」
「まあ」

その涼しそうな顔が腹立つ。

チャイムが鳴って鞄を持ち上げ、席を立って後ろを通り過ぎようとした遊佐の鞄の紐を掴んだ。

「っおい、何してんだ離せ」
「駅前のクレープ食べたい」
「は?」

強制的に足止めされて振り向いた遊佐は怪訝そうな顔で私を見た。

「クレープ食べたい」
「…勝手にいけよ」
「火曜日」
「離せ」
「貸し一つあったでしょ。ご丁寧に遊佐指名くらって当てられてたよね」
「…お前なぁ。…はーっ」

そこまで言って長いため息を吐いた遊佐は白旗を上げた。

「…これで完全にチャラだからな」

「やったー!」と万歳する間に教室を出ていく遊佐をスクールバッグ片手に追いかけるべく立ち上がる。

「真知どうしたの?」
「えりか。ふふ、これからデートなんだ。また月曜ねー」

声に反応して近付いてくるえりかに笑顔で手を振って駆け足で教室を飛び出した。
「真知が、デート…」信じられない、といった様子の友人の声はすでに廊下の遊佐に追い付いていた私には聞こえなかった。