あの後落ち着いた私とお母さんに先生は病気の名前を教えてくれた。

『人魚病』

本当はもっと難しい横文字でなんちゃらって長かったけど、分かりやすく言うとと言われた名称がそれだった。

人魚病はある日突然発症するもの。
血縁関係や遺伝は関係ない。
痛みや怠惰感は特に見受けられない。
人体の部位が泡になって消えてしまうことからこの名称が付いた。
消える時に腐敗臭や血生臭さはない。
泡そのものにも臭いはなく、皮膚片や骨が残ることもない。
この事から、難病ではなく奇病と呼ばれているようだ。


話を聞きながら私はあれこれ脳内に纏めてみたけれど、結論はよく分かっていない。この病気の症例が殆どなくてワクチンとか治療法とかなんにも無いから、命の保証がないって初めから突きつけられている気分だ。
なのに、何でかな?こんなに恐ろしい病気になったのに私は落ち着いている。
変なの…怖いと言う感情さえも泡になって消えてしまったのかな。