田舎の中学3年生の私、佐田七海は毎日、放課後を図書室で過ごしている。元々は、本を読むタイプではなかったのになぜ、今、図書室に通っているかというと、それは、少し前に遡る理由がある。

「中学は部活!」
そう決めていた私は、吹奏楽部の部長になり、バリバリと部活動をしていた。しかし、引退の期日には逆らえない。

「先輩、ありがとうございました!!!」
「先輩大好きです!」

そう言われながら引退した吹奏楽部。
弱小ではあったけど、とても楽しい部生活だった。部活動にかまけて(?)勉強や恋愛を疎かにした中学生活。でも、私はそれなりに満足していた。……そんな部活動も終わり、受験に向き合わないといけなくなった私はとても憂鬱だった。"部活ロス"とでもいうのだろうか?私はとても勉強する気が起きなかった。というのも、私の志望校は、私の成績では余裕のレベルだったからである……国語以外は。だから少しも焦りがなかったわけではない。そのため、
(本を読めば国語力があがるかな?)
そう考えて、部活動を引退した一週間後の金曜日に図書室に向かったのである。

図書室なんて、いつぶりだろう?
一年生の時から、あまり、図書室は、利用していない。そのため、どこにどんな本が置いてあるのか分からない。
(どんな本がいいか、全く分からないな……)
そう思って、興味のありそうな本を棚から出しては見る、棚から出しては見るということを繰り返していた。しかし、読みたい本は見つからない。……そろそろ選び疲れてきた時、



窓際の二人がけの机の前に座って、難しそうな本を読む背の低い男の子に出会った。