「あっ、やっぱり会ったね。」

小声で話しかけてきた人が、テーブルを挟んで前に立つ。

今日は久々にミラーに来ていた。

いつの間にか、カフェラテは冷めきっていて湯気もない。

どれくらい集中してたの、私?

顔を上げると、そこには思った通りの東さん。

『東さん!こんにちは。』

「千李でいいよ。オレも威音ちゃんって呼んでいい?」

爽やかな笑顔を向けてくる東さん…じゃなくて、千李さん。

『はい、千李さん。』

って、私も笑顔を返すと。

「こらっ!うちの常連客ナンパしてんじゃねぇよ!」

鋭い罵声が聞こえた。

ここの店長さんの來斗(らいと)さん。

千李さんの先輩だって言ってたな。

だから、かなりくだけてる感じ。

「ナンパじゃねぇよ。知り合いなんだよ。」

「はぁ?お前が大学生とどんな繋がりだよ。」

まぁ、そうだよね。

不思議だよね。

少しだけ困った顔になった千李さん。

『來斗さん。千李さんは私の大事な人です。』

「えっ?!つきあってんのっ?!」

あっ、勘違いさせちゃった。

う~ん…なんて言えばいいのかな。

『じゃなくて、恩人さんです。』

「恩人…?」