悲しいけど、涙はでない。

私自身、心のどこかで認めたくないけど、わかってたはずだから。

『…わかった。』

「マンションは威音名義で買ったから、自由にしていいわ。生活費もいつも通り振り込むわ。足りなかったらあの人に連絡しなさい。大学でるまでは面倒みるから。働き出したら、光熱費以外は自分で稼ぎなさい。きちんとしたところに勤めなさいよ。あと大学が三年あるとはいえ、あまり恥ずかしい所はやめてちょうだいね。」

もう会わないみたいな、最後に言っておくといわんばかりの言葉の数々。

目さえも合わない。

『…私はもうふたりの中では、いらない存在なのね。』

「いらなくないわよ。あなたは私達の唯一の子供だもの。でも、そうね…自立してちょうだい。子供じゃないんだから、自分のことは自分でできるでしょ。私達も忙しいんだから。」

荷物をバッグに詰めながら、淡々と言われるセリフ。

中学の頃から自分でしてきたよ?

中学、高校、大学一年の今も、一人の生活だったよ?

私はいつ子供じゃなくなったの?

なんだかむなしくなって、私はバッグを持って家を出る。

そのまま、付き合って2年になる25歳の彼氏、藤守神威(ふじもりかむい)の家に向かう。

神威も仕事人間だから、きっとまだ帰ってはいないだろうけど。

それでも、家にはいたくなかった。

マンションに行き、まだ帰ってない暗い部屋に入る。

時間は夜10時。