「アオがこんなにも運動能力皆無だと思わなくて、保健室に逃げようとしたのに捕まえて公開処刑させてごめんって」

『・・・お前さあ、謝るのか馬鹿にすんのかどっちかにしてくれる?』

「学校1の美少年が貧弱女子以下野郎で、例え女の子達の理想が容姿端麗運動能力抜群成績優秀でも、アオが顔だけってバレても気にすんな」

『あ、お前馬鹿にする方選んだね。最低かよ』





アオは私の声に呆れたように諦めたように、いつもの調子を取り戻す。頭を上げ、私と向かい合うように頬杖をつく。見つめ合う距離は案外近くて、アオの疲れた目にほんの少し心配になる。





「本当に運動ダメなんだね、もはや才能」

『あのな、俺の顔がどうかは知らないけど、勝手に理想ぶつけるのやめてくれます?運動嫌いな奴だっていっぱい居るだろ』

「それは拡張器で他の女子達にお伝えしてくれる?別に私アオの顔タイプじゃないし」

『はああああ、真奈美ちゃんの好きな宇田川先輩もイケメン運動神経抜群、テストはいつも学年トップなんだようぜええええ』





わああん、と大きな声で叫ぶとマットに顔を突っ伏すアオ。そのつむじをぐっと押してやる。





「握力21kgには無理だろうな」

『うるせえゴリラ女』

「貧弱よりもゴリラのがマシですぅー」

『はっ、たかが握力37kgが何を言う』

「いや21kgに言われたくない」




そう言い返すとアオが顔を上げて、私に右手を突き出す。何を考えてるかわからない。時々ある無表情に見せかけた真顔で、全く感情が読めない顔。ただいつも、瞳だけはまっすぐと私を見据えてくる。





「何この手」

『腕相撲』

「えー?アオの手、折れちゃうよ」

『はッ、やってみろよ。こっちは手加減してやるよ』