ちゃんと逃げずに、アオを見つめることができる。すっきりした頭の中では2本の赤い糸が、真っ直ぐ伸びているだけだ。もう絡まりなんかしていない。










アオは私の目の前に来ると、頭を深く下げた。驚く私に構わず、アオは頭を下げたまま苦しそうな声を落とす。








『ハル、ごめん。本当に、ごめん』

「え?あの、アオ、」

『・・・キスして、ごめん。何もしないって言ったのに嘘ついて、ハルに嫌な思いさせてごめん』







黙ったまま、言葉を受け止める。こんなに真剣に頭を下げるアオを初めて見た。

さらさらな黒髪が窓から差し込む光に照らされてほんの少し茶色く透き通る。








「アオ、顔上げてよ。私、全然怒ってなんかないよ。むしろ、私も謝らなきゃいけない」

『ハルは何も謝んな。悪いことしてないのに謝ったりすんな』







ゆっくりと顔を上げたアオは私の顔を見て、真っ直ぐ強い気持ちをぶつけてくる。

その気持ちを受け止めるように首を縦に振って、私は自分の気持ちをぶつけるために口を開いた。