佳菜子ちゃんの真っ直ぐな瞳に射抜かれて、込み上げるそれを必死で飲み込んで見つめ返す。





『私、少しずつですけどクラスに溶け込めるようになったんです。春井先輩と青井先輩のおかげで、踏み出せたんです』

「・・・それは、佳菜子ちゃんが凄いんだよ」

『ありがとうございます。春井先輩、私頑張ってよかった!』






ふふ、と笑う佳菜子ちゃんに堪え切れなくなった私の瞳から涙が頬に伝った。佳菜子ちゃんは驚いたようにあたふたする。




そんな佳菜子ちゃんに小さく笑って、フォトブックとチョコを受け取り、別れを告げると部室に向かう。




久しぶりに入った部室は、何一つ変わっていなかった。アオがソファーで少女漫画を読んでいないことが違和感なくらいだ。




私の特等席の椅子は窓際にいつも通り置かれていて、その上に双眼鏡がぽつん、と置き去りにされている。横の棚には段ボールいっぱいの紙飛行機。




テーブルの上には空の風船ガムの箱と、私達がテーブルの上に油性のペンで描いたゲルゲドンがブサイクな顔で笑っている。







アオはどんなことを思ってここに来ていたのだろう。





アオはどんな気持ちで私の隣を歩いていたのだろう。






アオは私が勝部先輩を見つめている時、何を思っていたのだろう。