『・・・なんで、わざわざ迎えに来たの』

「え?」

『迎えに来て、俺を見つけて、泣いてくれたの』





アオの言葉は零れる度に熱を帯びて、痺れが増して、何かが壊れたように溢れ出す。



笑おうと、思った。こんなアオの声も様子も見た事がなくて、直感で私達の繋がる糸が失われると思ったから笑って取り繕うとした。






『──────ハル、逃げないで』






でもそっと持ち上げられた瞳に、射抜かれた時、全く笑えなくなった。アオの表情は弱々しくて切なくて、溢れ出した想いに歯止めが効かなくなったように苦しそうだった。それでも、優しさの込めた笑顔を浮かべていた。





「わかんない・・・わかんないけど、勝手に身体が動いちゃってたんだもん」





セミダブルベットの上に正座をして、バスローブをぎゅっと掴んだままアオに本音を告げる。




「ただただ、アオが居なくなるのが嫌で怖くて、アオに早く会いたくなっ、てた、」





ゆっくりと視線を上げた先、瞳に映り込むのは今まで一番表情の読み取れないアオ。アオは何も言わず、ゆったりとソファーから立ち上がるとこちらに歩み寄ってくる。





『俺、ハルに言ったよね』

「え?」

『俺は“酷く脆い”んだって』





アオが纏う空気は火傷をしてしまいそうなほど熱くて、それなのに触れた瞬間に凍りつきそうなほど冷めたくて。憂いを帯びた耽美さに縛り付けられたように動けなくなる。