もう夜の寒さで身体も冷え切っている。アオに置いてけぼりを食らったらここに入ることなんて出来ずに本気で公園になる。ごてごての看板を見上げて息を呑む。



相手は、アオだ。






「アオだから、大丈夫」

『・・・それは、どうも』





決意を固め、看板からアオに視線を戻す。アオとかち合った視線は想像を反し冷たい瞳だった。なのに瞳には似つかわしい微笑を携えていた。



中に入り、部屋を選んで顔の見えない受付の人に鍵を受け取りエレベーターに乗り込む。怯えまくる私とは違ってアオは変に慣れてやがる。



お洒落な赤い絨毯の敷かれた廊下で擦れ違うのは大人びいた男女だけ。



部屋の前について、アオは鍵を開け、部屋に入る。縮こまる私に振り向いたアオは無表情のまま私の腕を引き、その中に引き入れた。





「あのさ、慣れてるの?」

『は?』

「こ、こういうとこ」





重ための扉がバタン、と閉まって、部屋に入るためだけの扉が既にもう一つある。所謂ここは玄関で、本当に靴を脱ぎ捨てるためだけに存在している。



そんな狭い空間でアオに見つめられて固まる。アオは少し不機嫌そうに綺麗な顔を歪ませ、逃げるように壁に寄りかかる私にそっと手を伸ばす。